介護離職者の方の声

※プライバシー保護のため、インタビューにご協力いただいた方のお名前は掲載を控えさせていただいております。なお、掲載内容の一部は個人が特定されないよう配慮し、内容を一部編集しています。


40代・男性/母親の介護

Q介護が始まったきっかけを教えてください。

母が転倒して入院したことがきっかけでした。最初は「退院すれば元の生活に戻れる」と思っていたんです。でも、退院してから一人で生活するのが難しくなり、週に何度も実家に行くようになりました。最初のうちは仕事が終わってから実家に寄って、食事を用意したり、薬を確認したりしていました。ただ、それがだんだん毎日になっていきました。

Q仕事との両立は大変でしたか?

心身ともに大変でした。。朝、会社に行く前に母の様子を確認して、仕事が終わったら実家へ行く。帰宅するのは夜の10時、11時になることもありました。睡眠時間も減って、仕事中に集中できないことが増えていきました。それでも、「介護を理由に仕事を休むのは申し訳ない」という気持ちがあって、職場にはあまり詳しく話せませんでした。

Q退職を決めた瞬間は?

母が夜中に体調を崩したときです。翌朝、ほとんど寝ていない状態で会社に行ったんですが、仕事中に「このままではどちらも中途半端になる」と思いました。その日の帰り道に、初めて本気で「仕事を辞める」ということを考えました。今でも、あのとき他に方法があったんじゃないかと思うことはあります。

「職場に言えなかったことが、一番苦しかった」


50代・女性/父親の介護

Q介護と仕事をどのように両立していましたか?

最初は普通に働いていました。父の通院がある日は有給を使って、急に何かあれば仕事を早退するという形です。でも、休む回数が増えてくると、「また休むの?」と思われているんじゃないかと気になってしまって。実際に誰かから責められたわけではないんです。自分で勝手に「迷惑をかけている」と思ってしまっていました。

Qそれが離職につながったのでしょうか?

そうですね。一番つらかったのは、介護そのものだけではなくて、仕事と介護の間でずっと板挟みになっていたことです。父のところに行けば「仕事は大丈夫かな」と考えるし、会社にいると「父は大丈夫かな」と気になる。どちらにいても、もう片方のことを考えていました。

Q今振り返って、どう思いますか?

もっと早く相談すればよかったと思います。介護サービスのことも、会社の制度も、当時はほとんど知りませんでした。「自分が頑張れば何とかなる」と思っていたんですが、介護は一人で頑張るものじゃなかったんだと思います。

「辞めれば楽になると思っていました。でも、現実は違いました」


40代・女性/父親の介護

Q離職した後の生活はいかがでしたか?

最初の1〜2か月は、仕事に行かなくていいことに少し安心しました。時間に余裕ができて、父のことをきちんと見られるようになったので、「これでよかった」と思っていました。でも、しばらくすると別の不安が出てきました。収入がなくなったことです。

Q具体的にはどんな不安がありましたか?

毎月の生活費です。それまでは自分の給料があったので、あまり意識していなかったんですが、仕事を辞めると当然入ってくるお金がなくなる。介護に必要な費用もありますし、自分自身の将来のことも考えないといけない。「父のために仕事を辞めたけれど、この先自分はどうするんだろう」と考えるようになりました。

Q介護離職を考えている方に伝えたいことはありますか?

一人で抱え込まないことだと思います。私自身、もっと早く周りに相談していれば、違う選択肢があったかもしれません。仕事を辞める、続けるの二択だけではなくて、勤務時間を変える、介護サービスを利用する、家族で分担するなど、いろいろな方法があります。当時の自分に言えるなら、「辞めると決める前に、まず相談して」と言いたいです。


3名の方のお話を伺って

今回、実際に介護離職を経験された3名の方のお話を伺い、介護離職は決して特別な人だけに起こるものではないと感じました。「仕事も続けたい」「家族のことも大切にしたい」
そのどちらも諦めたくないと思いながら、介護と仕事の両立に悩み、少しずつ負担を抱えていく。その中で、最終的に仕事を辞めるという選択をされていました。また、3名のお話に共通していたのが、「もっと早く相談すればよかった」という思いです。

介護が始まったとき、すべてを自分一人で抱えるのではなく、家族や職場、介護サービスなど、周囲に相談することで見つかる選択肢もあります。

介護離職を防ぐために大切なのは、介護が必要になってから考えるのではなく、「もし自分や家族に介護が必要になったらどうするか」を、今のうちから考えておくことなのかもしれません。

今回のお話が、介護と仕事の両立について考えるきっかけになれば幸いです。


最後に


「若いのに、どうしてこの取材を?」

今回お話を伺った3名の方から、共通してこんな質問をいただきました。

「まだ若いのに、どうして介護離職について取材しているんですか?」

その答えは、「若いからこそ」です。

介護は、まだ先のことだと思っている人が多いかもしれません。
私自身も、以前はそう思っていました思っていたというよりこの問題にすら直面していなかったというのが正しいでしょうか。

だからこそ、介護が身近になる前の今だからこそ、知っておきたい。
そして、同じように「自分にはまだ関係ない」と思っている若い世代に、少しでも介護について考えるきっかけを届けたい。

介護離職を経験された方々の声を、これからの世代に伝えていくこと。
それが、今回この取材をした理由です。

「まだ自分には関係ない」ではなく、「いつか自分にも起こるかもしれない」

この取材が、そう考えるきっかけになれば嬉しく思います。