年間10万人以上が、介護・看護を理由に仕事を離れています。
実際に介護離職を経験された方々に数名、自らお話を伺いました。
離職を決断した理由や、そのときの思い、そして離職後に感じたこととは——。
当事者だからこそ語れるリアルな声を、ぜひご覧ください。
家族の介護をしながら働く人が増える一方で、介護や看護を理由に仕事を辞める「介護離職」も、依然として大きな社会課題となっています。
総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、2021年10月から2022年9月までの1年間に、介護・看護を理由として前職を離職した人は約10.6万人にのぼります。
また、同じ調査では、働きながら介護をしている人は約365万人。2017年の約346万人から増加しており、仕事と介護の両立が必要となる人は決して少なくありません。(厚生労働省)
介護・看護を理由とした離職者数
| 調査年 | 離職者数 |
| 2012年 | 約10.1万人 |
| 2017年 | 約9.9万人 |
| 2022年 | 約10.6万人 |
介護離職者数は長期的にみても年間10万人前後で推移しており、2022年には前回調査から約7,000人増加しています。(内閣府ホームページ)
特に働き盛りの世代に起こりやすい問題
介護は、定年後に始まるとは限りません。
厚生労働省によると、雇用労働者のうち、55~59歳では12.3%が介護を担っているとされています。50代から60代前半は、管理職や専門職など、企業の中核を担う人材が多い年代でもあります。(厚生労働省)
そのため介護離職は、本人のキャリアだけでなく、企業にとっても経験や技能を持った人材の流出という問題につながります。
女性に偏っていることも課題です
介護・看護を理由とする離職者は、女性が多いことも特徴です。
2021年10月から2022年9月までの1年間では、介護・看護を理由に離職した約10.6万人のうち、**女性が約8万人、全体の75.3%**を占めています。(内閣府ホームページ)
介護を家族だけで抱え込むことは、就業継続やキャリア形成にも影響を及ぼす可能性があります。
なぜ介護離職が起こるのでしょうか
介護離職の背景には、一つの原因だけではなく、さまざまな事情があります。
例えば、
- 急に家族の介護が必要になる
- 介護サービスの利用方法が分からない
- 介護と仕事を同時に行う時間的・精神的負担が大きい
- 職場に相談しづらい
- 介護休業や介護休暇などの制度を知らない
- 制度はあっても、実際に利用しづらい
- 家族間で介護を分担できない
- 介護の長期化によって仕事との両立が難しくなる
といった問題が考えられます。
厚生労働省も、仕事と介護の両立には、職場での支援だけでなく、介護サービスの利用や家族による介護体制の構築など、複数の支援を組み合わせることが重要だとしています。(厚生労働省)
2025年から、企業の対応も変わっています
介護離職を防ぐため、2025年4月から改正された育児・介護休業法が段階的に施行されています。
企業には、介護休業や介護両立支援制度を利用しやすい雇用環境を整えることに加え、介護に直面した従業員への制度の個別周知や、利用についての意向確認などが義務付けられました。(厚生労働省)
また、介護に直面する前の段階から、従業員が仕事と介護の両立に必要な制度を知るための情報提供も重要になっています。
つまり、介護が始まってから対応するのではなく、「介護が必要になっても仕事を続けられる環境を、あらかじめ整えておく」ことが企業に求められています。
介護休業は「介護に専念するため」だけの制度ではありません
介護休業は、介護をするために仕事を長期間休む制度だと思われがちです。
しかし、本来は、介護サービスを手配したり、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談したり、家族で介護の役割分担を決めたりするなど、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間として活用することが想定されています。(厚生労働省)
介護が始まったからといって、すぐに退職を選択するのではなく、
「職場の制度」+「介護保険サービス」+「家族・地域の支援」
を組み合わせることが、仕事を続けるための重要なポイントになります。
介護離職を防ぐために
介護は、ある日突然始まることがあります。
だからこそ、介護が始まってから考えるのではなく、早い段階から情報を知っておくことが大切です。
働く人ができること
- 勤務先の介護休業・介護休暇制度を確認する
- 介護に直面したら、早めに会社や人事担当者へ相談する
- 市区町村や地域包括支援センターに相談する
- ケアマネジャーに介護サービスについて相談する
- 家族だけで介護を抱え込まない
- 介護休業を「介護体制を整えるための準備期間」として活用する
企業ができること
- 介護に関する制度を従業員に分かりやすく周知する
- 介護について相談しやすい窓口を設ける
- 管理職が介護に関する相談を受けられる環境を整える
- テレワークや柔軟な働き方など、利用可能な制度を検討する
- 介護に直面する前から従業員への情報提供を行う
- 個々の従業員の状況に応じて、仕事と介護の両立を支援する
介護離職を「個人の問題」にしないために
介護離職は、本人の努力だけで解決できる問題ではありません。
介護をする人が仕事を続けるためには、本人が早めに準備することに加えて、企業による職場環境の整備、介護保険サービスや地域の支援を適切に組み合わせることが重要です。
高齢化が進む中、仕事と介護の両立は、一部の人だけの問題ではなく、多くの働く人が将来直面する可能性のある身近な課題になっています。
「介護が始まったら仕事を辞める」のではなく、
「仕事を続けながら介護するために、何が使えるのか」を早めに知っておく。
そのための情報提供と環境づくりが、これからますます重要になります。
参考資料
- 厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
- 総務省「令和4年就業構造基本調査」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書」